Cantharis(カンタリス/スペイン甲虫)

 この薬の最も重要な特徴は炎症状態であり、炎症で最も重要な特性は、壊疽の状態に進む速さである。炎症状態は普通何日も限定されたコースをたどるが、この薬がその部分に施されたり内服したりすると、炎症状態は非常に迅速にその部分の死を終結させる。内服するとほとんど迅速に進展し、尿路に作用し、尿毒性の状態を確立し、それが精神面の症状をもたらす。局所的炎症状態が非常に迅速に起こり、このため患者は非常に速く激しい病気になって倒れる。毒性効果における強い投与から、ビクッと驚き、ただならぬ症状になり、有機組織全体は混乱し、痛ましい症状が通常尿路にある。その部分は初期から壊疽になる。

 精神面の症状は顕著である。その中でも指針は、赤い顔をして突然意識がなくなる事である。突然ボーッとする。心の混乱。変わった考えに圧倒される。考えが猛威をふるい、まるで外の影響に取り付かれているように、考えは行きたい所へ行く。

 頭は熱く逆上し、せん妄状態で、かなり興奮して激怒し、まばゆいか明るい物から、或は喉頭に接触したり、狂犬病で水を飲もうとする事から発作が再発する。恐れと考えの混乱。心は炎症部分が示唆する対象に向かって走る事がよくある。膀胱と生殖器は炎症を起こし、その部分の興奮と鬱血が性本能で立ち上がり、そのためセックスの事を考えたり、性的な狂乱が起きる。激しい好色の狂乱や興奮は、それに一致する考えが付き添う炎症を伴って起きる。性本能は狂ってしまい、男性の勃起は痛く激しい。ペニスは炎症を起こし痛く、セックスをすると痛く、まだこの狂乱がある。横柄。冒とく。落ち着きのなさは、激怒の結果となる。落ち着きのなさは、患者を動かさせ続け、好色な狂乱と混じって、激怒やせん妄状態が起きる。Cantharisにおけるこの種の精神面の行いは、Hyos.やPhos.やSecalehisで起きる事に似ており、激しいせん妄状態が、性的な考えや話しと混じって起こる。いくつかの例では、我を忘れてわいせつな歌を歌ったり、人間の性器や尿や便を対象にした事をしゃべり、堕落した人同士を除いて、健康に話すのではなく、野性的な狂った内容の話をする。しかし病気で、慎み深い控えめな人や処女がそう話すので、どこでそのような言葉を拾って来たのか不思議になる。そのような症例では、看護婦と医者以外、皆外へ出すのがよい。愛する年老いた母親が泣き、手を絞って「どこで娘がそのような言葉を習ったんでしょう」と言う。娘さんを非難できない。それは単に尿路や月経機能の状態が、寒さや露出からもたらされたか、或は月経機能に関して娘が知るべき事や、卵巣や子宮や外部の炎症がどのようであるか、母親が娘に言わない事によってもたらされ、尿は燃焼して痛く、外部の炎症状態を引き起こしたり、尿は停滞し逆上する。そのような事がCantharisである。

 激しく、突き刺すような痛みの頭痛は、まるでナイフで刺されたようで、炎症状態は心を激しく捕らえる。

 レメディ全体を通して燃焼がある。頭が燃焼し、震え、突き刺すように痛い。精神状態における無意識とせん妄状態。側頭に燃えるような痛み。側頭と後頭が縫われるように痛い。脳の奥深く突き刺すような痛みがある。髪の毛が抜ける。

 頭と心の症状といっしょに来る事を除いて、目の問題だけが示される事は滅多にない。大きな水疱を伴う顔の丹毒。目の中が燃焼し、大気全体が黄色く見える。目が燃えるようにヒリヒリする。壊疽の傾向を伴う目の丹毒。目が熱く、涙でやけどする。顔や鼻筋の丹毒で目蓋を含む。この状態ではRhusの方がよく使われるが、激しい場合はCanth.が示される事がよくあり、Rhusより好ましい。Rhusは水膨れと燃焼があるが、Canthは2回の来診の間に、丹毒が黒くなり、浅黒く、迅速な変化が起き、壊疽が始まるように見える。 丹毒になった部分が燃えるように痛く、接触から皮膚の周りが燃える。Rhusではこうではない。Cantharisでは小さい水膨れは触られると火のように燃える。非常に軽くでも、発疹が触られると燃え、つまり、そのような発疹を、レメディが作り出すことができる。

 この患者が衰弱状態に入ると、青ざめ、ヒポクラテスのような顔つきになり、死亡する。初期の病型に一致し、壊疽でさえそうで、腸や膀胱、脳、背骨、肺の激しい炎症があり、沈んだヒポクラテスのような顔つきをしている。肺の炎症、壊疽のタイプ、疲労、そして肺は、火のように燃えて影響を受け、すぐに死体のような臭いのする、サラサラし、血の混じった、水っぽい痰を吐く。それは驚くほど速く起こり、しばらくして死亡するだろう。鼻は縮小し、ヒポクラテスのような顔つきで、尿が抑圧される。長びく飲酒から覚めたある患者の事を、私は覚えている。前述のような状態であった患者を残して、私は夕方立ち去った。患者は口から血の混じったよだれを垂らし、死にかかっていた。泥酔でほとんど凍りついた状態から、一晩でこの状態になった。それはCantharisであるか、或は朝が来る前に死ぬかだったが、朝までに患者はさび色の唾液を吐き、うまく回復した。Arsenicは肺に燃焼があり、黒い唾液を吐き、肺炎の兆候があり、落ち着きのなさと不安とArsenic他の症状を伴うと、Arsenicがすぐそれを止めるだろう。このような激しいレメディは死ぬかもしれないような症例に必要とされる。

 喉に燃えるような痛みがある。ひどい喉の渇きがあり、喉と胃に燃焼がある。あらゆる液体を嫌う事を伴う喉の渇き、それは口と喉の切望が、精神面の状態に敵対している。喉の中では飲みたがっており、心は水を嫌がっている。胃や幽門や腹部が激しく燃焼している。腹部は腫れて鼓腸になり、刺すような、切れるような、突き刺すような痛みがある。腸内に迅速な炎症がどこに起きても、血に混じった粘液か血清の下痢が起き、胃腸から水っぽく、血が混じった液体が生じる。目からも同様の水っぽく、血が混じった液体が生じる。そしてこの水っぽい液体が皮膚に触れる時はいつでも、燃えて皮を剥ぐ。血の混じった尿。

 排尿中に排便したくなる。患者は尿と便を排出するため、激しいテネスムスで便座に座り、もう数滴の尿か、もう少したくさん血便を出せさえすれば楽になるのにと思うが、安堵感はやって来ない。あらゆる部分が炎症を起こし燃えている。テネスムスと駆り立てられるのは、膀胱が空の時だけでなく、膀胱が一杯の時もある。尿を溜める。何も出ないか、或いは1〜2滴出る。膀胱の激しいテネスムス。テネスムスを伴う切るような痛み、刺すような痛み、ナイフで突き刺されるような痛みが、膀胱の頸部にある。様々な方向に痛みが噴射する。頻繁に駆り立てられるのを伴う激しい痛み。テネスムスが続く。不安な状態と逆上が起き、非常に激しい苦しみと排尿と排便に駆り立てられ、極端にかき立てられる性的過敏症を伴う。泌尿器と生殖器全体が炎症と壊疽の状態にある。排尿時に燃える。この血尿は、膀胱内と性器の周りで火のように燃える。尿を溜めるか抑圧する。 淋病にかかっている人に、膀胱と直腸の燃焼とテネスムスを伴うこの激しい炎症が起きるのは珍しいが、そのような症例では、このレメディは示されない。激しさと迅速さが、このレメディの特徴である。それは痛みと興奮をもたらし、その事は他のレメディには見つからない。その次に来るのがMerc. cor.である。

 女性では、あらゆる部分が過敏である。卵巣と子宮の炎症。膣の中が燃える。膜様月経困難症。月経が早く来すぎ、多量で黒い。

 産後の痙攣。遺残胎盤。燃えるような痛み。後産を排出するための娩出陣痛がなく、このレメディ全体を入る症状がある場合、それを投与してから、粘液の娩出を伴い、子宮の正常な収縮が起きる。

 腎臓と背中を通じて、激しく刺すような痛みがある。腰と腹部に痛みがある。排尿時に痛むので、1滴だけ排出する時に、うめき声を上げて叫ぶ。