レパートリーの使用法(J.T.ケント)

 私のレパートリーが印刷されて以来、使用してくれた多くの友人が、このレパートリーの使用法を書いて欲しいと言って来ている。それを請け負うには非常に難しい事だが、私の手法を説明してみるべきだという事に気づいた。最も注意深い処方家は、よく似た方法で取りかかかっているのが、疑いなくわかる。

 ホメオパシー療法におけるレパートリーの使用は、注意深い作業が必要となる。我々のマテリア・メディカは、レパートリーなしでは非常に扱いにくいため、最高の処方家でさえ、それほどよくない結果しか得られない。

 ハーネマンの規則に従って適格に症例をとった後で、調べる準備ができる。誰でも知っているので、この手法において普通のルーブリックを提供する意図はない。きちんと取られ、通常に満たされた症例は、天候や暑さ寒さ、好き嫌い、精神面の症状、また体の部分多くの環境に対する敏感性において、病的な兆候を示すだろう。

 私は症例全体を調べる時、患者の一般的な状態の改善や悪化、また患者の症状といった一般的な状態を描写している表現を全て選出する。次に患者の心身の切望全て、好き嫌いを全て、大嫌いなもの、不安や恐怖などを、注意深く考える。次に知的面の倒錯、判断のしかた、記憶、精神面の障害などをさがす。レパートリーに見られるようなルーブリックに対応するように、互いに相反するレメディーを全ておいて、これら全てを形式上いっしょにアレンジする。取り除いていく過程によって、すぐに数個のレメディーだけが、これらの症状を全て貫いているのが見られるだろうから、そのうちのどれが最も得意な症状のようなのか確定するため、まだ最終の一つを決めず、その数個のレメディーだけを注意深く比較する。特異で独特のそのような症状に、特に注意を向けるべきであると、ハーネマンはその153パラグラフにおいて教えている。また、医者は患者に十分注意を払うべきだととも教えている。

 さて、この2点を正確に考えれば、独特な症状は病気に共通しているのではなく、患者を特徴付けているものであるという事が、ハーネマンの考えだという事がわかるだろう。更に包括的な見解から選出された始めの多くの症状全ては、患者を特徴付け、患者自身を断定するものである。このように症状の一部を取り扱う事によって、可能性のあるレメディーのリストを2〜3、あるいはただ1つに減らせる。ホメオパシー療法の基本に、症状の全体性を考える必要があるように、これら2〜3のレメディーが、いかに特異性全てに一致するかを確定するために、今残りの症状全てを調べる必要がある。

 上記はお決まりの作業だけであり、皆そうしていると言うかもしれない。その通りが、そうすると、より多くの問題が現われる。包括的な症例を何とか丸める事は、レパートリーの作業の最も単純な部分であるが、症例の片側が現われている場合や、患者が自分の症状をプルービングで見つからなかったことばで話す場合、症例はかなり違って来る。患者の記録は、患者自身のことばをできるだけ近く生かすべきである。広範な対応と長年の卒業生から、多くの人にとって、症状の記録が症状の記録が治癒できる処方の可能性を含む時を知るのは難しいとう結論となった。多くの症例は一般的な症状も、精神面の症状もなく、全く独特な症状でなく、病気に共通した症状だけである。成功につながる処方が、そのような症状から成り立っている場合、「幸運なヒット」以上になる事は滅多にない。それは科学的な処方として分類され得ない。多くの記録は、何ページも不明瞭な処方や、多くの医者から恥ずべき「おとり」として、失敗を生じさせるのに手を貸す一つのキーノートが書いてある。

 患者を特徴付ける症状が記録に出て来ないならば、医者は失敗に驚くべきでない。レメディーは、治癒するため、疾患の病理の症状同様、患者の症状に似ていなければならない。レパートリーの作業の要求についていくつか示すため、誰にでも起きる症状の仮定のグループをもたらそうとするだろう。包括的な症例や、孤立したグループで「書痙」と呼ばれるものを、しょっちゅう目にする。これは、解明した症例や症例の一片として紙上できちんと整理される前に、多くの要素に分割されねばならない。「書痙」を診て、それについてそれ以上何も言わなければ、治せる薬は、制限された数でしかないだろう。しかし、我々の供給は無制限で、よく見なければならず、検査すると「書痙」は 指や手や腕、あるいはその3つすべての痙攣を意味する事がわかるだろう;1つ、あるいはその3つすべての麻痺もありうる;指や手がうずく事もあり、このすべては書く事による状況で、あるいは書いている間に悪化する。

   書いている間の指の痙攣 : Brach., Cocc., Cycl., Trill., Mag-ph., Stann.   
 書いている間の手の痙攣   : Anac., Euph., Mag-p., Nat-p., Sil.   
 書いている間の指のしびれ  : Carl.   
 書いている間の手のしびれ : Agar., Zinc.   
 書いている間の手の麻痺感  : Acon., Agar., Chel., Cocc.   
 書いている間の手首の痙攣 : Amyl-n., Brach

 上記は、この主題に関してマテリア・メディカに見つかる全てであり、我々が接続してきた乏しい臨床及び病理の記録のせいで、失敗が起きる;だが我々は、症状の苛立たしい群を、考慮し始めたところである。時には上記の不十分さが、ただレメディーが必要である事を示している事は、本当である。しかしだいたいの場合はそうでなく、下記のように続ける;

  指、手、手首、あるいは影響を受ける部分の痙攣(Cramp in the fingers, hand and wrist or such parts as are affected )私のレパートリーの971、972、973ページの一般面のグループを使用。

  指と手のしびれ : 1038ページと1039ページの一般面のグループを使用。
  手と指の麻痺感 : 1176ページと1179ページの一般面のグループを使用

 これらを注意深く書き出し、一般面の一般的なルーブリックのページをめくると1358ページに「労作 Exertion」が見つかり、労作からの複合した症状で見つかるレメディーを書き出す。書く事は長引く労作に過ぎない。このようなシンプルな課題を学んだ時、同じプロセスが、弦楽器やピアノをひいたり、あるいはいかなる道具でも楽器でも、長く使用して、手や指の力をなくしたり、痙攣などが起きた人のレメディーを示す事が、医者にはすぐわかるだろう。これが一般的なルーブリックの的確な使用法である。

 更に、このように選出されたレメディーで治癒された後に、そのようなレメディーはまず、参照された特異性の乏しいリストに加える事ができるだろうし、このようにして我々のレパートリーの有用性が伸びていくだろう。これは臨床的な症状の正当な使用である。我々の乏しい特異性を築き上げるのは、いつまでも一般的なルーブリックを適切に適用する事である。新しいレパートリーは、そのような情報を注釈に加えるための空白を設けているのがわかるだろう。世界中の多数の正確な処方家が、この広がりに参加してくれれば、多少とも広がった特異性のレパートリーがすぐにできるだろう。我々の一般面はボーニングハウセンによってよくできているが、彼は純粋に特異だった多くのルーブリックを一般化しており、その使用を間違った方向へと導き、失敗の結果となる。ボーニングハウセンのポケットブックを成功に導く鍵は、一般か特異かどちらかの個人の症状にモダリティを備え付けるため、それによって一般面をすぐに利用するようにできるアレンジに起因する。誰が使ってもわかるように、この特徴は私のレパートリーに含まれている。しかしこのように使用できるのは一般面である。数多くのルーブリックは混乱した特異性からできており、一般面で適応されると、患者の叙述ではないものは「ヒットするか外れるか」で、普通は外れてしまう。たとえば「書く事からの悪化 aggravation from writing」は、特異性のルーブリックの一つである。患者自身が書く事から悪化する事は当てはまらないが、目や頭や手や(曲げる事から)背中などが、このルーブリックを作り上げる。頭痛が症状であり、頭痛でない全体の他の部分での不調に関するレメディーを見つける場合、 書く事からの悪化に頼るのは無駄である。手の不調に適する場合に、精神面の症状のためのモダリティを使う事は、状況の使用を曲解する。 書く事からの悪化は、書く事から悪化する症状に限定すべきで、それは一般面ではないので、それに沿うべきである。私のレパートリーではそうしてある。「動き motion 」という大きなルーブリックでは、これが全く違ってくる。そのルーブリックからと、マテリア・メディカからBryoniaを調べると、まさに患者自身が動きで悪化する事が現われるそのレメディーによって、 それだけ多くの特異な症状が、 悪化する事がわかるだろう。それゆえ動きは、一般性と特異性による一般的な身体の状態に関して、悪化の範囲を示すルーブリックであり、一般面に記載されなければなららない事がわかるだろう。多くの患者自身が修正されるように見える多くの特異性を修正するルーブリックはどれも、一般面に分類されなければならない。多くのすばらしい治癒はボーニングハウセンの使用からもたらされ、多くのすばらしい失敗がそれに続き、それは上記の原因からである。新しいレパートリーは、特異性全てを前に見せるよう作られており、それぞれの症状はそれにつながる状況を伴っている。これは初期段階であり、使用される方がよく記録をとった経験を保存してまとめ、著者にそれをくださらなければ、非常に長い間そのままかもしれない。著者はこの作業を展開し、完全にする事に生涯をかけており、間違いを指摘し削除し、何をおいても一般面から起き、治癒に観察される特異性のモダリティを記録してくれる真の協力者を求めております。

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