Aesculus Hippocastanum (セイヨウトチノキ)

 このレメディーには特殊な種類の過多が一貫して見られ、血管が充満し、それは四肢と全身に影響し、脳が同様に影響を受けている事を示す症状がある。

 Aesculusの状態は睡眠中に悪化するため、症状は起きがけに観察される。頭が混乱して目が覚め、混乱して周りを見回し、戸惑い、人が誰かわからず、自分がどこにいるのか、自分が目にする物の意味する事は何なんだろうと不思議に思う。特にLycopodiumのように、寝ている時に恐がったり、混乱して起き上がる子どもに役立つ。レメディーは、ひどい悲しみや苛立ち、記憶の喪失や、仕事嫌いを作り出す。時として体の鬱血感や、静脈の充満感があり、そしてこのような症状が非常に顕著に起きる。それは一般的な静脈の静止状態であり、睡眠中悪化したり、横になって悪化したり、体を使って改善したりする。症状はある程度の労作でなくなり、動き回ったり、何かをしたり、忙しくしていると改善する。脈動が四肢まで広がり、睡眠中は心臓の鼓動が聞こえる(可聴動悸)場合には、これが動悸で苦しむ人に役立つ事がわかるだろう。

 さて、精神面の症状がプルービングにおいて最も重要であるように、病気における精神面の症状も最も重要である。ハーネマンは精神面の症状に最も注意を払うようにと、指示している。というのは精神面の症状は、その人自身を構成するからだ。最も高く最も深い症状が、最も重要であり、それは精神面の症状である。Aesculusでは非常に優れた細部はもたらされていないが、キーはある。極端な苛立ちは、多くの主な精神面の症状から分枝する、まさに一般の状態である。苛立ちと精神面の落ち込みは、多くの主なレメディーを一貫し、症例によっては、中心から精神面の症状すべてを回る。これらが精神面の他の症状よりも内面的な理由は、自己愛に関している事である。精神面の症状は、一つのレメディーにおいて分類されねばならない。記憶に関する事は、知性に関する事ほど重要ではなく、知性に関する事は、好き嫌いや欲望に関する事ほど重要ではない。患者は自分がしたい事をしている間、苛立っていない状態が見える。たとえば、もし話しかけられたかったら、患者に話しかけている間、苛立ちは見られない。患者がして欲しいと思う事を諸君がした場合、苛立ちは見られない。しかし患者が望まない事をしたらすぐに、この苛立ちや意志の乱れが現われ、この事はまさに人間の状態の最深部にある。望む事がその意志に属し、それは意志する事に関する事や、それぞれのプルービングにおいて最も重要な事である。この人は悲しいと諸君は言うかもしれないが、望む物が手に入らないため悲しいのだ。持っていない物を欲しがり、そのために悲しくなる。悲しみは精神面が混乱状態になるまで、広がるかもしれない。

 頭の混乱と目眩。目眩は知性の混乱ではない事を、区別しなさい。その事について熟考するだけで、そうでない事がわかるだろう。精神面の混乱は知性の乱れであって、感覚の乱れではない。歩行中のよろめきと、はっきり考えられない事を伴う精神面の乱れた期間を区別しよう。目眩は転がるような感覚であり、感覚中枢に属する。大きな間違いが我々のレパートリーの何カ所かにあり、頭の混乱が感覚中枢下の目眩に置かれている。このような事は注意検討されねばならず、そうすると、患者から差し出された症状が何を意味するのか、我々自身の頭がはっきりする。ある患者は通りを歩いている時にクラクラするとか、頭の中がすべてグルグル回るように見えると言うかもしれないが、患者の頭は明瞭で、形の列を完全に加える事はできるかもしれない。もしこれらの表現の意味に関し、我々自身が完全に明確であれば、通常、患者の意味している事が見つかるだろう。患者のことばを記録する事は大切だが、患者は全く意味していないで見える事を言う事がよくあり、その後、患者が本当に意味する事を合間に入れる必要が出てくる。たとえば「胸にこんな痛みがある」と、お腹に手をおきながら患者は言ったり、女性が月経中に胃が痛いと言うが、そこは子宮である事が諸君にはわかる。述べた事について、患者に何度も質問したり、痛い部分に手を持って行ってもらったりせねばならない。それゆえ同様に、患者は全然目眩がしない時に目眩について話すが、頭の混乱を感じていたり、或いは、通りでよろめいた事を意味する時に、頭の混乱について話す。

 このレメディーの本質には、体中に飛ぶ痛みがあり、PulsatillaやKali carb.のようであり、ヒラヒラ動き回る、鋭い、撃たれたような、裂けるような痛みがあり、ある所から他の所へ飛び移り、ほとんどは皮膚の深さ以上にはないように思える時がある。痛みが神経に沿って飛び移る時もある。

 このレメディーは頭痛が多い。脳が押出されるかのように思える場合には、鈍い痛みも起きる。しかし特にこれらの痛みは後頭部に感じられ、それはまるで頭が押しつぶされそうで、ひどく痛く、激しい痛みで、脳が充満する。「右から左に前頭部の鈍い痛みがあり、額の皮膚が収縮している感じがする」。頭が一杯で、鈍く重い痛みを伴い、額が痛く、右目の上が痛い。「右眼窩上部に神経胃痛」「左頭頂骨に撃たれるような痛みがあり、後に右に起きる」。頭皮に蟻走感。皮膚を調べると、蟻走感が見つかるだろう。体中くすぐったく、撃たれるようで、痒く、そのため頭皮に起きる事は、すべての部分において、このレメディーに属する事だけである。

 Aesculusは、特に目に「痔」がある時に、すばらしい目のレメディーである。どんな考えが浮かぶかね。それは特に大きくなった血管と言う意味だ。目が非常に赤く、涙が出て、眼球が燃え、血管が現れる。このように血管がますます明確になる事は、多かれ少なかれ痛いものだ。眼球は痛く、鋭く、目の中に撃たれるような痛みがある。Aesculusのリューブリックはほんとんどどれも、縫われるような、撃たれるような、ズキズキする痛み、充満感を伴ってあちこちさまよう痛みがある。ほとんどどんな乱れも、充満さを増す。手足の充満さ、浮腫と呼ぶ圧迫でくぼむ充満さではなく、緊張である。この薬は、熱い風呂で静脈がよく乱れたり、熱い風呂の後で弱くなったり、暖かい天候で弱くなったり、熱を嫌い、寒さを欲するような問題が多くある。それはPulsatillaの状態である。Pulsatillaの静脈は寒い天候で収縮し、ブルブル震えると患者は気分がよいが、静脈は一杯で、暖かい空気や熱い風呂の後に鬱血する。ぬる風呂でPulsatillaの患者は気分がよくなる事があるが、トルコ風呂は一般的に疲れる。Aesculusの病訴の多くはこの種類で、Aesculus は冷たい空気で気分がいい事がよくある。Aesculusの症状は、気温によってもたらされる事がよくあり、特に 少し刺すような痛みが起きる。このような表面的な痛みは、ほとんどいつも熱で改善する特徴がある一方、深い疾患は寒さで改善する事がよくある。さてPulsatillaでは、頭皮の刺すような痛みや、体中の刺すような痛みが、あちこちに起き、それらは局部的に熱を加える事で改善する事がよくあるのだが、一方患者自身は寒い所にいたがる。同様にAesculusの刺すような痛みは、熱でよくなり、一方患者は冷たさで改善する事がよくあるが、リューマチや静脈の状態では、寒く湿気た天候で悪化する時がある。またSecaleでは、神経に沿って起きる少し鋭い痛みは、熱でよくなるが、患者自身は冷たい空気の中にいたがったり、服を脱ぎたがるのを見るが、痛みの部分は例外で、暖かくしておきたがる。Camphoraに同じ事が一貫するのに気づく。ズキズキ痛む間、患者は窓を閉めておきたがり、熱い物を当てたがるが、痛みがひくとすぐ、窓を開け、服を脱ぎたがり、そうする事で息ができる。これらは一般的な事で、症状を分析する時に観察される。

 またAesculusは静脈のレメディーで、鬱血し、充満し、破裂する事もある。さて、教えたい別の特徴がある。鬱血が起きた所は紫色や青色である事に気づくだろう。このレメディーは喉の炎症を作り出し、その特徴は非常に暗い色である事だ。静脈瘤や潰瘍を作り出す傾向があり、その周りは顕著な薄暗い色になっている。Aesculusは脚の静脈瘤や紫色の環がある潰瘍を治している。痔の状態を調べると、腫瘍が紫色であるのが見えると思うが、それはまるでかさぶたのように見える。このレメディーは炎症状態では活動的でなく、不活発で受け身である。ある特定のレメディーは、かなり赤味の度合いが高いわずかな炎症を作り出し、すべてが激しく素早いが、この薬はゆっくりで、活動は減少し、心臓は重労働で、静脈は鬱血している。

 「おくびは酸っぱく、油っぽく、苦い」「吐きたい」「胸焼けと食後に食べ物をグッと飲み込む」。消化不良が多く、PhosphorusやFerrumと共に分類せねばならないこのような症状によって、見ることができる。患者が食べ物を飲み込むとすぐ、或いは少ししてから、酸っぱくなり、胃の中身を空にするまでしばらくの間、おくびを出す。それはPhosphorusやFerrum, Arsenicum, Aesculus、そしてもう2〜3の薬の状態である。 Aesculusはまた、鬱血や胃潰瘍の状態もある。「胃の中がずっと苦しく、燃える。吐く傾向がある」。このような状態は、胃潰瘍の患者にあるかもしれない。

  腹部はたくさん問題がある。腹部と直腸の右季肋部の症状を読んだら、これらを調べてから、顕著な門脈の静止状態があるに違いないという事がわかる。消化は遅く、腸は便秘で排便の時に直腸が出る。非常に厄介な右季肋部の充満を伴う痔がある。肝臓は疾患が多い。食後、腸と直腸が苦しい。まるで直腸にたくさん棒があるかのように、突くような、突き刺すような、燃えるような痛みがある。目がくらむような痔で、大変苦しむ。痔静脈はすべて膨らみ、潰瘍化している。便は直腸内に詰まっており、膨張した静脈に対し、その後潰瘍ができ、出血とひどい苦しみを伴う。このレメディーは出血しない痔に合うのではないかと考えられる事がよくあるが、出血性の痔も治す。テキストには2ページに渡って、直腸の症状に関するものが見つかる。ひどい痛みで、かなり痛く、頻便で、濃い色の便の後に白い便が出て、肝臓鬱血が起きる。慢性の便秘。

 背中は多くの問題が起きる場で、特に背中の下部、仙骨と臀部を通して起きる。背中に沿ってずっと痛みがあり、首の後ろに痛みがある。痔を患う患者が、首の後ろと脳の基部、頭蓋底の頭痛が起きるのは、非常によくある事で、このような痔を患う患者が歩く時、仙骨を横切り、臀部に痛みが起きる。歩行中に痛みは仙骨を通じ、臀部に入るこの事はAesculusの顕著な特徴であり、非常に顕著なので痔がない場合でさえ、そうなると期待してしまうだろう。

  鈍い背中の痛みが続き、歩くのはほとんど無理で、座ると立ち上がったり、歩く事はほとんどできない。座っている状態から立ち上がろうとして、何度も痛みでできず、やっと立ち上がれるAesculusの背中の痛みで苦しむ人を見るだろう。この事はSulphurやPetroleumに見られるが、Agaricusでも治る。

  Aesculusは、骨盤内がひどく引っ張られる痛みを伴う女性の疾患によく示される。多くの場合、多量の帯下と歩行中の臀部に圧迫する痛みを伴う、骨盤の引き下ろされるような痛みをAesculusは治して来た。子宮が鬱血しているように感じる。月経前も月経中も、下腹部が充満しているように感じる、と言う。この時、かなり苦しく、臀部に痛みを伴う。「下腹部が拍動する事を伴い、子宮が痛い」「老齢者の帯下で、分泌液は暗い黄色で、べとべとし粘つく」「背中の張りが仙腸関節背を横切る事を伴う帯下」。妊娠中、子宮の痛みや充満、不快感を伴う病訴がたくさん起き、歩行中痛みが背中を横切る。

  Aesculusは、全関節が痛風で、痛風性のリューマチ疾患、神経痛性疾患など、痛風疾患が非常に多い。特に肘から手まで、前腕と手に見られるこのリューマチの傾向において、その傾向が見られる。引きちぎられるような、裂けるような痛み、特別な規則がなくあちこちに飛び、暑さで楽になる。大腿や脚の静脈瘤はAesculus (“luoric acid)で治っている。この静脈瘤の体内のもう見て来た傾向は. Aesculusの顕著な特徴である。喉の痛みがなくなってから、鬱血した静脈が残り、それをAesculusが治す事がある。目の問題が治ってから、静脈瘤が目に残る。リューマチの病訴と共に、静脈瘤がある。そう言われて来たように、痔体質において、最もよく示されて来たレメディーの一つである。