Mercurius (マーキュリー/ 水銀)

 Mercuryの病理学は、Merc.viv.とMerc.sol.という2つの微妙に異なる調合のプルービングにおいて見つかっているが、臨床における区別を充分に示せるほどの差異はない。

 水銀は温度を測るのに使われ、Merc.の体質はちょうどそのように、変わりやすさと、寒暖に対する過敏さがある。患者は極端な温度で悪化し、暑さでも寒さでも悪化する。急性の寝込むほどのMercuryの病訴は、ベッドの暖かさで悪化するため、布団をはがねばならない;しかし布団をはいで寒くなると、また悪化するので、快適さを保つのが難しい。これは痛みや発熱、潰瘍、発疹、そして患者自身についても当てはまる事である。

 Mercuryは不快臭のある患者である。「水銀的臭い」という言葉があるが、特に息が非常に臭く、部屋に入った途端にわかり、部屋全体に充満している。汗が臭い;強く、いくぶん甘く、きつい悪臭。不快さが全てを貫く; 不快臭の尿や便や発汗;鼻と口からの臭いも不快である。Merc.を多く用いると、患者は不快な臭いの唾液を出す。一度そういった唾液の患者の臭いをかいだ事がある人は、水銀臭を忘れないだろう。学生の頃、ほとんど全ての部屋にも水銀臭があったことを私は覚えている。Mercuryは歯茎が影響され、唾液が生成され るまで与えられた。臭いはしばしばMerc.の指標となる。

 夜に悪化する。骨痛、関節患部、炎症的状態は全て夜に悪化し、日中はいくぶん緩和される。骨の痛みはあらゆる場所にあるが、特に肉が薄く骨を覆っている部分に痛みがある。骨膜の痛みは、くり抜くように痛く、夜に悪化し、ベッドの暖かさで悪化する。

 腺は炎症を起こして腫れる;耳下腺、舌下腺、首や鼠径部や腋窩のリンパ腺全てが影響を受ける;乳房が腫れ、肝臓の炎症と腫れもある。腺に関し特筆するレメディである。硬化もまた一般的で、炎症を起こした部分が硬化する。皮膚が炎症を起こすと、堅くなる。炎症を起こした腺は堅い。潰瘍を伴う硬化がある。

 潰瘍化の傾向がこのレメディを貫く。潰瘍は喉や鼻、口、下肢など、あらゆるところに見られる。潰瘍は刺すようにズキズキし焼けるように痛く、ラードのような基部があり、灰白色の外観は、ラードのコーティングを広げたように見える。それはジフテリアの滲出液のように見え、Merc.には炎症した表面にジフテリアの滲出液が起きる。咽頭の潰瘍はこのような外観がある。粘膜は潰瘍がなく炎症を起こす事があるが、滲出液が出て、そのためジフテリアに役立つ。潰瘍において同じ状態が起きる;体の系統が衰弱している場合、灰色のラードのようなものの滲出液や灰色の付着物がある。下疳がそのような形態を取り、基部に白っぽいチーズのような沈殿物がある。 Merc.の病訴は夜に悪化し、骨痛や骨膜の炎症などがある事に気がつけば、Merc.が梅毒を治すことがあると聞いて驚かないだろう。アロパシーの医者がこの疾患に対して思いついたのは素晴らしく、同様に水銀の継続的使用を正当化して、かなりの症例を治したり、抑圧したりしている。適時に与えられれば、それで治る。

 他の顕著な特徴は、膿を形成しやすい事である。炎症を伴い、燃えるような、刺すような痛みがあり、膿みが速く形成され、その部分は寒暖どちらでも悪化する。焼けるような刺すような痛みの膿瘍;膿の形成を伴う関節炎;腔が濃で充満する胸膜炎。膿みからの分泌物は黄緑色。Merc.の淋病性の分泌は、べとついた黄緑色で、尿道に刺すような燃えるような痛みを伴う。

 関節のリウマチ性炎症と粘膜のカタル性炎症は、このレメディを貫き、これらは発汗を伴い、驚くべき特徴は、発汗で楽にならず、発汗中悪化する事である。老齢者の梅毒や淋病や痛風患者におけるリウマチ。乾癬と梅毒、淋病の症例のいくつかに関し、充分類似している。それは3つのマヤズム全ての特徴を帯びている。

 長期間Merc.をとったプルーバーは、衰弱する。この事は水銀を取ってきた老齢者や、水銀化された梅毒患者に見られる。震えを伴い常に衰弱しており、夜やベッドの温かさで悪化し、かなり落ち着きがなく、なさがあり、どのような姿勢を取っても楽にならないーMerc.はこのような状態に素晴らしいレメディーである。健康を害したこのように不幸で哀れな人々は、乾癬、梅毒、淋病のいずれかに関わらず、ひどく苦しむ。

 奇妙な特徴は、いかなる熱さも伴わず、腫れと膿瘍が繰り返し形成される事である。関節に膿瘍や腫れが形成され、頭から足まで汗をかき、夜に悪化し、痩せていき、震え、そして衰弱するが、膿瘍が続いている間は暑くない。生命力が非常に低く、その回復傾向がない場合、膿瘍が形成される;ゆっくりと長期間、膿瘍が形成され、膿瘍に刺激性はなく、肉芽を形成する傾向もなく、開いて分泌が続き、死んだように見える。Merc.はそれを温め、発汗を止め、肉芽形成を助ける。

 表層的な潰瘍が広がりやすく、侵食性になる;深くないが大きくなる。これらの開いた潰瘍は特に老齢者の梅毒患者に見られる; ラードのような基部;さほど刺激性はなく、無感覚でさえあり、膿が出る場合は。それは黄緑の色をしている;疑似肉芽が出きる。 Merc.Cor.は、表面的で腐食性があり侵食的な潰瘍に、素晴らしいレメディである。時にMerc.は、壊疽性状態において使用される事がある。これはどこにでも現れるが、特に唇、頬、歯茎に現れる。壊疽性口内炎。壊疽性下疳は悪臭がして黒い;脱疽は下疳の形になり、その部分の皮がはがれる。これらの状態は全て、暑さで悪化する。典型的なMerc.の膿瘍がある患者は、問題が悪化するため、湿布を嫌がることがある。

 震えはこのレメディーを貫き、そこここ震えている。振戦麻痺に大変益があるとして使われてきた。手の震えのために、何も持ち上げられないし、食べたり書いたりできない。Merc.はてんかん性発作や震え、 めちゃくちゃな動きをする子供に、素晴らしいレメディである。Merc.は、子供を手足のバラバラのぎこちない動きから脱け出させ、成長を助ける。痙攣し、ぴくぴく動き、震える。子供は、舌の動きがめちゃくちゃで、話せない。激しい振動。意志力で瞬間的にはコントロールできる不随意な動き。極度に落ち着きがない。

 震え、衰弱、発汗、化膿と潰瘍、夜悪化、寒暖から悪化、これらはMerc.の初期の印象を与える。

 精神症状は、この薬の本質をより深く示し、豊富だ。全体を貫く顕著な特徴は、性急さである;急ぎ、落ち着きがなく、不安で衝動的な性向。寒く曇った天気や、湿った天候で発病し、頭が働かず、 遅く、不活発で、忘れっぽくなる。これは、馬鹿げた傾向になりやすい人に見られる。質問にすぐ答える事ができず、見て、考え、やっと理解する。痴愚と脳軟化症は強い特徴である。馬鹿っぽくなる。急性の病訴におけるせん妄。患者は、自分は理性を失っているに違いないと感じる。自分に反抗する人を殺したくなる。殺人や自殺の衝動;暴力行為への衝動を伴う突然の怒り。自殺や暴力行為への衝動が起き、自分の理性を失うのではないか、自分の衝動を実行に移すのではないかと恐れる。衝動的な精神異常は特徴ではあるが、痴愚は精神異常よりもよく起きる。これらの衝動が主要な特徴である。患者は自分の衝動について語らないが、衝動は意志の深い悪意に関連しており、何かさせようと患者を駆り立てる。患者にMerc.を与えなさい。そうすれば、それが何であれ、コントロールしようという衝動を持ち、Merc.が患者に何かをしてくれるだろう。月経中、非常に不安になり、非常に悲しむ。何か邪悪な事が差し迫ったかのように、不安で落ち着かず、夜悪化し、汗をかく。

 これらの症状全ては、老齢者の梅毒に共通しており、水銀療法と温泉での硫黄浴で健康を害し、骨の痛みと腺疾患、発汗、カタルと全身の潰瘍を伴う。

 頭頭皮のリウマチ性疾患、灼熱感と刺すような痛みがある場合の神経と脳の問題、天候に影響を受ける燃えるような刺すような痛みがある頭部疾患、猩紅熱の後に耳漏を抑圧するような、分泌液を抑圧してから起きた頭部の不調に、Merc.は合う。子供の病床に呼ばれ、その子は頭に汗をかき、瞳孔が開き、頭をゴロゴロ転がし、夜に悪化し、猩紅熱にかかっていたか、或は耳からの分泌液を抑圧していたら、Merc.を考えなさい。Merc.はチフスの状態に類似した長引く発熱で、耳からの分泌の抑圧により引き起こされた状態を治す。ホウ砂やヨードホルムなどを耳に詰めたために、初めは間欠熱で、その後発熱が続いていた患者を治した事がある。このことは5~6週間続くだろうが、Merc.の一服を投与後に分泌が戻って来た時にだけ楽になる。このことは、脳脊髄膜炎の症例を思い出させる。頭が後ろに引っ張られ、ゆがみ、片方に固定していた。中耳炎になりかかっており、分泌液は抑圧されていた。医師が2~3人呼ばれており、なすすべがなかった。夜、私は患者の床へ行き、Merc.の経過と症状を得 た。Mercuriusは24時間以内に分泌を再び作り出し、斜頚はなくなり、熱は下がり、子供は素晴らしく回復した。このような多くの症例を思い出される。

 頭皮にまるで包帯をされているような緊張がある。神経質な女の子は、鼻の上と目の周りに、まるでテープで縛られたような、或はきつい帽子で頭を圧迫しているような頭痛が起きる。目に圧迫するような、裂けるような痛みがある。こめかみの燃えるような痛みは、まっすぐ座ると改善し、動き回り、夜に悪化する。リウマチと痛風の体質では、寒く湿気のある天候で悪化する骨膜の痛みがあり、目と耳の過敏さ、喉の痛み、腺の腫れを伴う。老齢者の水銀化された梅毒における頭痛;これらはバロメーターになる;天候に過敏。カタル性の頭痛は非常に煩しい;べとついた分泌液を伴う慢性カタルを患っている人の頭痛。べとついて分泌物は水っぽくなり、額や顔や耳の痛みは非常に苦悩を与える。これらの頭痛は非常に激しい。いかなる部分からの分泌の抑圧から、或は足の発汗の抑圧からの慢性的リウマチ性頭痛;足の汗と頭痛が交互に起きる。足の汗が消えると、関節に痛みと硬さを感じる。Silicaも同様。Sil.とMerc.はよく選んでも、お互いに後続しない;しかし、天然の水銀を長期間とり続けていた場合、Nitric acidのように、その症状が合えば、Silicaも症状を取り除く良いレメディである。

 全ての頭痛に伴い、頭内にひどい熱さがある。破裂しそうな頭痛、脳の充満感、バンドのような締め付け感がある。万力のような圧迫。頭痛の時、空気に敏感。これはMerc.全体に当てはまる。部屋の中で楽になるが、暖かい部屋か寒い部屋で悪化し、隙間風で激しく悪化する。布団をかけたいが、熱さから悪化する。輪のような感覚があり、夜に悪化する。

 Merc.は、麻疹と猩紅熱後の、急性水頭症の発生を防ぐための素晴らしいレメディである;子供は頭を転がし、うめき、頭に汗をかいている。Apisに非常に近い関係があり、それもまた猩紅熱後の水頭症を予防したり、治癒したりする素晴らしいレメディである。

 老齢者の梅毒患者における外骨腫症。頭蓋骨膜における、切り裂かれるような、引き裂かれるような痛み。頭部の外側全体は、触られると痛い。頭皮は緊張し、ヒリヒリ痛い。頭は臭く、脂っぽい汗をかく。子供は湿潤性湿疹があり、表皮剥離し、不快臭のある発疹がある。

 Merc.は素晴らしい目のレメディーで、特に風邪においてそうである。痛風やリウマチの患者においては、風邪のたびに目に来る。火を覗き込んだり、火のそばに座ってからでさえ、目のカタルは悪化し、熱の放射でヒリヒリする。まるで長く睡眠を奪われていたかのように、瞼がしっかり閉じる。目の前に霧やかすみがある。Merc.は梅毒患者の虹彩炎を治癒する。最近のやり方は、目の癒着を防ぐため、虹彩炎に散瞳薬を使う。私は多くの症例を治療しているが、瞳孔を拡大させようと思っていない。そういう事は必要がないと信じている。ホメオパシーのレメディは虹彩炎をあっという間に止めるので、目の癒着は形成されない。またもし癒着が始まってもレディがそれを取り除く。目の周りとこめかみなどに、引き裂かれるような、燃えるような痛みがある。まるできつくぴったりする帽子をかぶっているような頭皮の緊張、或はテープからのような緊張がある。角膜の潰瘍と炎症。角膜に静脈が現れる;炎症、特に角膜に限った炎症で、膿疱性だったり、拡散されることもある。目の症状全てに伴い、涙がかなり出て、涙は皮膚を傷めてヒリヒリさせ、頬の下に赤い線ができる。緑色がかった黄色や緑色の分泌物。まぶたは痙攣的に閉じる。ひどい光恐怖症。まぶたの組織全ての炎症的状態における結膜炎と、より深い組織特性。Dulc.のように、風邪が目に来る。眼球の虹彩に、小さな細かい腫瘍を見つける事もあるだろう。それは瞳孔を横切るように成長し、くっついている。それはまさに梅毒性のコンジローマである。 Merc.はこれを数日以内で治癒する。網膜と脈絡膜の炎症や、視神経の炎症。あらゆる視覚障害。まぶたの腫れを伴う化膿性眼炎において役立つ。梅毒、リウマチ或は痛風という2種類の体質が、それには必要である。目が開けられない; 発作的に目を閉じ、大きく腫れる。

 耳の問題。恐ろしく悪臭を放つ緑色がかった分泌物。鼻や他の部分から出る分泌液のように、緑色で、べとついた、皮膚を剥ぐ膿みが、耳から出る。悪臭を放つ耳漏。破れた鼓膜を伴う中耳炎では、Merc.は頻繁に必要とされるレメディである。長く、寒い冬の後に来る春の寒く湿った天候は、耳漏の症例を多く引き起こす; 大きな街にほとんど特有のものである。耳の鼓膜は、他の部分と同様に、患者がレメディによって良い状態に置かれると癒える。うまく治療されなければ、穴が残るだろう。耳は炎症を起こし、痙攣のような痛みを伴う。Merc.には、Apisのような刺酢ような痛みがある。お決まりの仕事しかしない人は皆、刺痛にはApisを投与するが、患者が必要とするのはMerc.だという事がよくある。化膿した不快臭のある耳漏。耳のあらゆる炎症を伴う耳下腺と頸部腺の肥大。耳下腺はうずき、肥大し、首が堅くなり、頭は後ろに引っ張られることがある。外耳道のフルンケル。菌性のこぶやポリープ。

 鼻の問題の描写には長い時間がかかるだろう。老齢の梅毒患者は、鼻骨疾患があり、べとついた緑っぽい黄色で、表皮を剥ぐ臭い分泌液を伴う。鼻から鼻血や血液の混じった分泌液が出る。鼻風邪は表皮を剥ぎ、水っぽく、顔の骨を通じる圧迫を伴い、熱さ寒さで悪化し、夜に悪化する;あらゆるすきま風に敏感;起き上がり歩かなければならない;反対の状態を伴い、かなりくしゃみをする鼻風邪があり、横たわると好転し、夜ベッドに横になっている間は症状がないが、日中起きている間だけそうである。熱い 空気を吸い込むと鼻に良いように感じるが、その熱で体が悪化する。絶え間なくくしゃみをする。血が出たり、カサカサした、赤い小鼻。鼻の中の古いカタルが臭い。皮がむけて、燃えるような痛みがあり、腫れる。小鼻の内側に、ヒリヒリし、燃えるような痛みがある。骨にうずきと裂けるような痛みがあり、骨の中に圧迫感がある。顔の骨は痛く、まるで外に向かって押されているような感じがして、患者は押したいと思うが、押すと痛みがある。

 Merc.は、風邪をずっとひいている乾癬の症例の体質全体を、充分治癒できるほどは深くない。Merc.は風邪をすぐ治すが、その特色を植え付けるため、患者はもっと頻繁に風邪をひくようになる。Merc.はしょっちゅう投与されるべきではなく、一冬に2回以上投与してはいけない。見た目にMerc.が示される場合、Kali-iod.も顔に同じ燃焼感があり、鼻水が出る鼻風邪で、暑さやベッドの暖かさから悪化し、夜に起きる鼻風邪を治すだろう。それはまたMerc.を解毒する。感染の症例ではMerc.を多く用いてはいけない;もっと深い薬を探しなさい。

 梅毒性の発疹と、カタルを伴うか伴わない顔面神経痛がある。流行性耳下腺炎(おたふく風邪)に重要なレメディである;この状態に定番のレメディでもあり、それが頻繁に示される事も示している。症状が合えば治癒する。

 よだれを垂らしている人における壊血病性の歯茎。慢性歯周炎;歯の周りから膿が混ざった分泌液が出る。歯痛;特に老齢者の痛風や梅毒患者は、歯痛のたびに痛む。歯が緩む。赤く柔らかい歯茎。歯は黒く汚い。梅毒にかかった子供は、Staph.のように、黒い歯と早期の虫歯がある。大量の唾液が出る。歯茎は触れると痛い。歯茎と歯根の拍動。歯茎は青く赤い縁か、紫色の縁があり、ぶよぶよして出血しやすい。歯茎が下がり、歯が長いか、或は長くなったように感じられる。歯がうずき痛いので、噛めない。歯茎と歯根の膿瘍。

 味覚と舌と口は、重要で明確な症状を提供する。舌を突き出すと、たるんだように見え、表面がパサパサし、青白いことがよくある。歯型が舌の縁に見られる。舌は腫れ、ぶよぶよしているので、周りにある歯が押しつけられると歯型がつくのだ。舌の炎症と潰瘍と腫れは強い特徴である。痛風体質の老齢者の舌は腫れている;夜に舌が腫れ、起きると口いっぱいに舌が腫れている。味覚は異常で、何も正しい味がしない。舌は何層にもなったチョークのように、黄色か白いもので覆われている。口が臭い;口から腐敗したような臭いがし、特によだれを出している患者は水銀の悪臭がする。舌は動きがぎこちなくなる;話す事が困難;話している事はわかりづらい。酔っぱらった人の、ぎこちない舌。潰瘍は平たい;侵食性の潰瘍;頬に穴が開く。軟口蓋が侵食され、硬口蓋の骨もしばしば侵食される。上顎洞における化膿性できものと、口から洞へのろう孔。 このようなろう孔で、特に骨が含まれている場合、Fluoric acidとSiliceaがより頻繁に指示される。不快臭のある唾液が大量に出る。子供と授乳中の母親の口がうずいて痛い;水銀臭さと、たるんでぶよぶよした外観の粘膜と舌がある小さなアフタの班がある。一般的な拡散した口の炎症。全粘膜が敏感で痛みがあり、燃えるように、刺すように、ヒリヒリ痛く、アフタ性の斑を 伴うか伴わなで乾燥する。子供の鵞口瘡。壊血病の歯茎。

 喉の痛み。ぶよぶよした外観伴う喉の炎症のためのレメディである。一般的に拡散する腫脹、耳下腺の腫れ、首が充満し凝っている。潰瘍にラードのような基部がある平らな潰瘍や広がる潰瘍。喉が非常に乾く。腫れで、嚥下に使われる筋肉全ての動きが阻害される。嚥下が困難で、痛みや麻痺性の衰弱があり、無理に呑み込もうとして、鼻の方に食べ物の固まりが押され、鼻孔から液体が出る。水銀臭が強い特徴であるが、その臭いが感知できない時にも、Merc.が治癒する事がよくある;Merc.はこのように喉との親和性がある。慢性的な喉の疾患と梅毒性の潰瘍や斑がある。炎症は上方や下方に広がり、赤や青白い斑点が現れ、その赤さは、まるで膿んだり潰瘍化しているように見える。赤い斑点はかなり紫色になるが、紫色になればなるほど、Lach.のようになる。扁桃腺は黒っぽい赤色で、刺すような痛みを伴う。膿が形成された後で、扁桃周囲膿瘍になる。ジフテリアに役立つが、そのほとんどのケースは拡散し、斑は広がり、あちこちにでき、ぶよぶよした外観ではあるが、潰瘍化していない。腫れ上がり、その基部に滲出液が現れる。首のコリ。喉の丹毒性の炎症。喉に、暗く、腐肉を形成する、侵食性、腐食性の潰瘍がある。

 肉、ワイン、ブランデー、コーヒー、脂っこい食べ物、バターを嫌う。ミルクが合わ、酸っぱくなって吐きもどす。甘いものが合わない。ビールが合わない。胃は 慢性不調で、げっぷ、吐きもどし、胃食道逆流などが起きる。胸やけは、むかつくよう。嘔吐を伴う吐き気と食べ物の逆流が起きる。このような胃では、食べ物は重荷のようである。まずい味、口が苦く、味を感じ、酸が上がって来る。この全部と共に、唾液はずっと口から流れ る。消化が続いている間改善されることはない。半分しか消化さていない物が吐き出される。それはリカー、ビール、ワイン、ウィスキー混ぜて飲んだことから、胃を壊した人の状態のようである。

 肝臓はさらに多くの問題を呈する。私達の祖先は何年もの間、毎年春に肝臓を調整するため、ブルーマス(訳者注:水銀が主成分の薬)を取っていた。自分で薬を買って、毎年春にそれを肝臓に注ぎ込み、その結果、医者に来てもらってその薬をもらうよりも、ずっと肝臓が悪くなる。便秘、胆汁の傾向、胃の不調。胃のあたりが充満し、発病し、寒く湿気のある天気や暖かく湿った天気で悪化、春に悪化、黄疸の状態、胃の不調、夜に悪化、ベッドの暖かさから悪化、夜間の発熱状態、口の悪臭、これらはMerc.の状態を示す。肝臓に縫割れるような痛みがある。肝臓の症状は右を下にして横たわると悪化する。Merc.の病訴の多くは、右向きに寝ると悪化する。肺の症状と咳、肝臓や胃腸の症状は全て右向きに横になっている間に悪化する。

 下腹部では、疝痛、ゴロゴロいう音、膨張、うずき、痛み、刺すような痛みや燃えるような痛みが見つかる。下痢や便秘といった非常に様々な便が起きる。はっきりわかる赤痢の状態。かなりいきまなければならない、粘液が混ざった血便で、いつまでたっても終わらせられないように感じ、もう何も出るものがなくなった時でさえ「全く終わっていない」という感じがする。 これはNuxやRhusの赤痢と正反対である。それらはほんの少しでも便が出れば緩和されるが、Merc.とSulph.は座っていきみ、Merc.の塩類は全ては同じ状態がある。Merc.Cor.は、どちらかというと、激しい発作で、排便や排尿への激しい衝動にかられ、その部分や純粋な血が流れる部分が燃えるように痛くて、激しく苦しむ。Merc.やIpec.やAcon.は、暑い気候で発生する流行性赤痢に、頻繁に示される。Ipec.やDulc.やMerc.は、寒い天候に発生する赤痢に、頻繁に示される。君たちは赤痢の症例の病床へ、レパートリーを持っていくか、或は家に戻って薬を送るべきである。最初の処方で流行性赤痢は治るはずで、また注意深く仕事をすれば、あらゆる症例を治すだろう。それは治癒するには非常に単純な状態であるが、混ぜてしまうのは非常によくない。赤痢だからと言うだけでArs.を投与してはいけない、というのはそれで治らなければ、症例を混ぜてしまうからだ。Ars.が完全に示されていると確信するまでは、赤痢にArs.をあげるのは待ちなさい。数日前、私は両側の心気症の痛みために横たわる事ができない患者を診た;患者は絶え間のなく吐き、足首と手、腕、肩に炎症性リウマチを起こし、腕と足に紫色の斑があり、胃が炎症し、完璧な病気の博物館だった。患者は Phos.やArs.や他に多くのレメディを非常に高いポテンシーでとっており、全ては充分よく選ばれていたようだが、Cadmium Sulphが15分以内に患者を眠らせた。ポイントは、患者は完全にじっとしていたがった事で、他の全ての症状はArs.のようでも、これはArs.のようではなかった。それはCadmium Sulphの強い特徴であり、Colch.やBry.のようにじっとしていたがる。長年の間、私はこれをそのような症例に使ってきた。他には、コーヒーの粉のような物を吐く癌患者の症例を診他のだが、Cadmium Sulphはその嘔吐を止め、その後患者が6週間後に亡くなるまで、非常によく食べた。かかりつけの医師はArs.と Phosを与えており、それ以上患者がとれなくなるまでモルヒネを投与していた。

 尿は燃えるように痛く、ズキズキ痛む。頻繁に尿意に駆り立てられるが、尿はわずかに滴るだけ;血尿で、非常に燃えるように痛い。尿道からの出血。尿が通過する事から痒みが悪化する。しばらく存在していた淋病;分泌液はベトベトし、黄緑色で、悪臭がある。排尿中、尿道にズキズキとした痛みや燃えるような痛みがある。精力の喪失。猥褻な興奮には痛みのある勃起を伴う。包皮と包皮腺に潰瘍があり、下疳や軟性下疳に合う。平らな潰瘍;ラード状の基部がある潰瘍。包皮の内側の表面の炎症。亀頭炎は悪臭のある膿みを伴う。慢性的亀頭炎において、包皮腺の後ろと包皮の下に膿が形成されており、淋病性か乾癬の場合、Jacaranda carobaを考慮する。

 多くの試練を抱える女性。卵巣が燃えるように痛く、ズキズキする痛みがある。痛みで叫び声をあげる。卵巣に刺すような、裂けるような、切られるような痛みがあり、患者は汗で覆われる。表皮を剥ぐ帯下が大量に出て、その部分は表皮がなくヒリヒリし、うずき、炎症を起こし、痒みがある。子宮に刺すような痛みや痒み、ほじられるような痛みがある。月経中に子宮と卵巣の痛みがある。月経期に妊娠していない女性に母乳ができる。月経の出血の代わりに胸に母乳ができる。 私はかつて16歳の少年を診察したことがあり、変わったことに胸に母乳ができていた。彼をMerc.で治した。

 月経の出血は明るい赤で、薄く、表皮を剥ぎ、血餅があり、多量か少ないかだ。月経が抑圧されている事もある。胆汁性のために水銀をとって来た習慣がある女性は、不妊が続く。(コーヒーを飲む人もしばしば不妊が続くので、コーヒーを飲むのを止めさせなければならない)。感情の激発を伴う無月経。女性生殖器の下疳。老齢の女性の性器は露出しており、表皮が出てヒリヒリし、うずき、常に出血している擬性肉芽がある。膣が燃えるように痛く、動悸がし、痒い。尿が触れて生殖器が痒く、洗い流さなければならない。子供や少年、少女においては、排尿後燃えるように痛く、いつも手を生殖器に持っていく。小さい少女に表皮を剥ぐ帯下が出て、そのため燃えるような痛みや痒みなど、多くの問題を引き起こす。生殖器の蜂巣炎。月経期におできや膿瘍ができる;粘液と皮膚の淵に沿って小さく長い膿瘍ができ、痛みがあり、歩くと悪化し、月経期の出血中に形成され、月経が終わるとつぶれる。これは痒みを伴い、ひどく苦しむ。

 つわり。妊娠中の女性に、生殖器に浮腫の腫れができる。炎症は拡散し、生殖器や骨盤がうずき、充満し、そのため歩きづらく、患者はベッドに行かなければならない。妊娠早期の骨盤蜂巣織炎において、Merc.は重要なレメディである。非常な弱いことから流産を繰り返し、適切に使われればMerc.は患者に素晴らしい強さを与える。長引く悪露。母乳が乏しく腐る。

 Merc.は子宮癌や乳癌において、最も優れた緩和剤の1つである。上皮腫を抑制し、時には治癒する事もある。私が知っているヨウ化水銀 (訳者注釈;Mercurius Iodatus Flavus)により治癒された症例は、胸に潰瘍化し、硬化したガチョウの卵ほどの塊があり、腋窩のこぶもあり、その部分は青く、希望はなかった。100倍に希釈したものを、痛みが非常に深刻になる度に投与すると、痛みは去り、良い状態を維持した。

 鼻で観察される効果は、Merc.の鼻風邪が全てではない。ほとんどのMerc.の症例は鼻に始まり、喉に移り、そして喉頭に行き、表皮が剥がれ、擦れる痛みや、胸部に赤むけてうずく痛みがある喉頭炎や気管炎、気管支炎が起きる。声が出なくなり、完全に失声症となる。Merc.の風邪のたどるコー スは下へ降り、肺炎に至る事さえあり、発汗と落ち着きのなさを伴い、ベッドの暖かさから悪化する。もちろん風邪の多くは、鼻に残る。

 胸部には様々な状態がある。咳;胸に残る風邪は反応に欠け、回復が遅い。風邪は最終的に気管支に落ち着く;胸が張り裂けるように感じ、咳は右向きに横になると悪化する。外気にさらされた事から風邪をひき、病人のように血色が悪く、ひどい咳や、胸にガラガラする音がする多くの患者を思い起こす;天気が変わる度に患者は新しい風邪をひき、右向きに寝られない;彼らは粘液性肺病になるか、あっという間に結核になる傾向がある。咳は夜の空気で悪化する。胸に多くの痛みがある。リウマチ体質で、常に発汗し、発汗中に悪化し、極度の暑さ寒さで悪化する。寝汗を伴い、胸部に縫われるような、刺すようなリウマチ性の痛みがある。血の混じった、べとついた緑色の痰が出る。肺が化膿し、大量の膿汁を形成する。激しいオーガズムで、胸の中が泡立ち、熱のほてりが起きる。多くの病訴と共に、喉の痛みとリウマチ、首のコリがある;腺の腫れと痛風を伴う首のコリ。風邪のたびに起きる首のコリ;首の横と後ろのコリ。他の病訴を伴い、頸管腺の硬化と痛みが起きる。

 Merc.は特に関節に作用する;かなりの腫れを伴う炎症性リウマチで、ベッドの熱や布団をかけないことから悪化する。衣服の正しい重さを得るのが難しい。発汗を伴うリウマチ疾患は、夜に悪化し、ベッドの熱で悪化、発汗中に悪化、病人のような顔つきをしている。特に上肢に発病し、下肢にも見つかる。

 パーキンソン病のように、四肢が震える状態。非常に衰弱し、手が震える。下肢が麻痺し、単収縮やぐいっと引っ張る痙攣、麻痺した部分の小刻みな震えがある。Arg-nやPhos.、Stram.、Secale、Merc.には麻痺した四肢の筋肉の単収縮がある。

 太腿と生殖器の間がうずく。脚の潰瘍;膿瘍。足の浮腫の腫れ。冷や汗。睡眠中に大量に汗をかく。ベッドの中で快適な時、痛みと発汗が現れる。患者は寒く感じるので、布団をかけるが、自分が暖かくなると痛みが悪化する。

 Merc.は熱が多い。非常にまれだが、しかし実際、突発性疾患で熱が続く。継続熱だけでは非常に低く示されるが、それは特に手術後の発熱に示され、初めは間欠性で、後に分泌液の抑圧から起きるのような継続性になる。Merc.の患者は、寒気がまだ来ていない時でさえ、凍え始める;暖かい部屋の空気の動きに敏感;すきま風に激しく過敏。冷たい手足。非常に大汗をかき、悪臭がある。一般的な病訴は発汗中に悪化し、汗をかけばかくほど悪化する。大汗をかき、発汗中に最大の苦しみがある。Merc.は明らかな間欠性がない。痙攣と痙攣の間に、肝臓障害や下痢、発熱が起きる。手術後の発熱や胆汁性の発熱、子供の寄生虫による発熱、間欠性の熱では、骨にひどい痛みがあり、空気に対し非常に過敏で、熱が上昇している場合寝床で夜に悪化し、水銀のような息をし、土気色の肌になる。Bell.のように、熱はそこまで高く上がらず、皮膚はそれほど熱くならない。重くなった舌と胆汁性の熱は、Merc.を投与後、消えてなくなる。消耗末期の消耗熱や、消耗熱で衰弱した疾患に、また痛みや不快臭のある汗などがある癌に、Merc.は役立つ。カタル性の熱や流行性感冒などに、また風邪が胸まで達し、あらゆるところに大量の分泌液が出る場合、Merc.は素晴らしい作用をする。弛張的に現れる擬似腸チフスや、患者に黄疸があり、元気がなく、衰弱し、震え、筋肉が小刻みに震え、ひどい疲労と継続熱を伴う場合にも合う。

 多くの皮膚症状がある;ふけのような発疹や小水胞性の発疹、膿を分泌する発疹。特に頭部において、小水胞は燃えるようにヒリヒリし、皮膚をはぐ分泌液が出る。体全体が激しく痒く、特に夜ベッドで暖まると、まるでノミによるように激しく痒くなる。梅毒患者のような銅色の発疹とまだらな粘膜。ふけのような発疹は特に顕著である。骨を薄く覆う皮膚や肉の部分に潰瘍ができる。悪臭のある湿疹の形成。ほとんどの発疹は大量の滲出を伴い湿っている。帯状疱疹を治癒する。皮膚は土色。2つの部分が一緒になる所はどこでも、皮膚が剥ける。太腿の間や陰嚢と太ももの間の皮が剥けてヒリヒリする。そのような場所の発疹。口角や目の接合部に亀裂が起きる:会陰の皮膚が剥け、出血し、そのため歩きにくくなる。

 この事は、水銀の塩類の基礎を提供する。