この薬は、ハーネマンの理論、すなわち「衰弱の理論」を示す。鉛の不溶性を考え、それを部屋の壁に塗り、新しく塗った部屋で寝ると病気になる人が多いことを考えると、病気になるのに一体どれだけの鉛が必要だったのだろうかと思うだろう。多くの患者は、ペンキを塗ったばかりの部屋では眠れない。鉛の疝痛や鉛の急性症状で倒れるのだ。多くの人が鉛に敏感である。ペンキ屋は何年も平気で鉛を使い続けているが、ある時突然、鉛に敏感になる。
空気中に放出される鉛の量は、いったいどれくらいなのだろう。顕微鏡で見ると非常に微量であるが、病気になるには十分な量である。しかし、その量を知るための手段がない。このような感受性や、鉛労働者の鉛麻痺、画家の鉛疝痛などを利用して、適切なプルービングを行い、Plumbumの均整のとれたイメージが得られる
Plumbumの症状全体を調べると、このレメディの一般的な麻痺状態に驚かされる。
身体の活動、器官の機能は、ペースが遅くなる。神経は、通常の活動でそのメッセージを伝えられない。筋肉は動きが遅く、緩慢である。部分的に麻痺し、最後に全体が麻痺する。
精神は障害が起き、遅くなる。知覚が鈍い。記憶困難。理解困難。自分を表現するための言葉が思いつかない。頭の働きが鈍い。このような患者との会話の間、患者は何を答えようかと考えながら、何を考えているのだろうと思ってしまう。
皮膚が不活発。刺して一秒後に「あっ」と言うのは、感覚の遅さを示している。これは感覚の鈍さを表している。このように、全く感じないと判断し始めると、手足がピクピクと動くようになる。
皮膚の麻酔。急性疾患では知覚過敏の状態があるが、慢性疾患では感覚を失うことが特徴である。手足の指、足の裏、掌にしびれがあり、これは皮膚から背骨の方まで及ぶ。
栄養機能は老廃物に追いつかず、衰弱し、ほぼ骸骨状態になる。皮膚はしわがより、くぼみ、しなび、骨の上に描かれている。痩せ方は局所的であることもある。
局所的な場合、一般に痛む部位に関連し、痛む部位が萎縮する。坐骨神経の痛み;焼けるような、射られるような;骨が引き抜かれるような;削られるような、四肢がやせ細るような痛み。腕から肩にかけて痛み;腕神経叢に激痛が走り、腕が萎縮する。
顔面の片側が神経痛になり、その側が萎縮する。一筋の筋肉が麻痺し、その筋が萎縮する。伸筋と屈筋の両方が麻痺するが、特に伸筋が麻痺する。麻痺は伸筋で始まるので、手首が下がる。彼は手を上げることも、或いは何かを持ち上げることもできない。広げるのが困難。
ピアノを弾く人に見られるが、指を速く上げることができないので、ペースが保てない。Curareもピアノ弾きのこの状態に対応するレメディである。過度の努力による麻痺。決まった練習曲や音階などを何時間も演奏して筋肉が疲労した時や、同じことを何度も繰り返さなければならない時、Rhusが登場するが、急性治療薬なので短時間しかもたない。
特定の筋肉が酷使されて、患者が風邪をひいて弱った時は、特にRhusの状態である。また、冷たい風呂や水浴びをした後、筋肉が麻痺した場合や、疲れている時に濡れてしまった場合、 Rhusの状態になる。このような慢性的な状態には、Plumbumが後続したり、Curareが示されることもある。
腸の麻痺:便秘; 便に力が入らない。腹筋は使えるが,直腸は麻痺し,便を排出することができない。
膀胱も麻痺:尿を排出できず、排尿のために筋肉が協調せず、滞留が起きる。Plumbumには尿の滞留と抑制の両方がある。
麻痺は慢性状態に見られる。急性では、発熱、疝痛、突然の便秘、腸の引き裂けるような痛み、嘔吐を伴う消化不良がある。食べたものはすべて酸っぱくなる。
食べた物すべてを激しく嘔吐する。慢性胃炎で、アルブミン質の粘液と、甘い物質の嘔吐が起きる。澱粉質、黒っぽい血液および緑色の液体の嘔吐。酸っぱい嘔吐。
このレメディはスピードが遅く、潜行性である;継続的に作用する;有機組織から離れることなく、それ自身のマヤズムを定着させる。従って、回復傾向のない、緩慢で陰湿な慢性症例に適する。進行性の筋萎縮や、進行性の麻痺。慢性の便秘;慢性の尿閉;慢性的に気が変になる。
一般的な心の緩慢さは別として、このレメディは鬱や、悲しみ、何か恐ろしいことが起こるかのような感覚に満ちている;恩を仇で返してしまった;許されない罪を犯してしまった、という感覚。心身ともに弱っている。
「臆病で落ち着きのない深い鬱」
精神状態では、考えるのが遅いが、このゆっくりした思考の中で、非常に多くのことを考える;考えようと努力している。その考えが、一晩中彼を悩ませ、眠りを妨げる。不眠症;考えようとする努力が続くため眠れない。
精神は作動せず、患者は想像と感情でいっぱいである。理解することも、記憶することもできない。これは不眠期間から昏睡期間へと進み、この昏睡は尿の抑制を伴う。尿毒症性昏睡。尿毒症。
この病気について臨床的な話をすれば、みなさんの頭に定着するのではないだろうか。何年か前、ある医師が妻のことについて私のところに来た。彼女は2日前から意識がなく、何日も尿が出ず、カテーテルで調べると、膀胱に尿がないことがわかった。奥さんにはいろいろな症状があったが、よくある症状だった。数日前から体のだるさがあり、臍が糸で脊柱に引っ張られるような感覚が続くと訴えていたが、そのうちに昏睡状態になった。夜中に、この医者が困り切って、私のところに来た。妻は死人のように青白く、呼吸が遅いという。Plumbumを一粒与えると、数時間で尿意を催し、起き上がって、二度とこのような発作は起こらなかった。
激しい心臓の痙攣性動悸があり、左側に寝ると悪化し、心臓部に著しい不安を伴う。心臓の肥大と拡張。心臓に刺すような痛みがある。
ヒステリー性疾患;ヒステリー性拘縮;指のけいれん;ヒステリー性の動き;部位や手、足、全身の痙攣;明らかな錯乱;心臓の痛み;部分的なしびれー全てがヒステリー性の現象である。
Plumbumは、欺いたり、騙したりする傾向がある。鉛の酢酸塩を、自殺のため少量とった女性に、ヒステリー状態があることが確認されている。その人は、誰かが見ていると、何時間もヒステリックな状態になる。誰も近くにいないと思うと、立ち上がって歩き回り、ガラスを覗いて、自分がどれほど綺麗か確かめるが、階段の足音を聞くと、ベッドに横たわって、意識がないように見せた。彼女は多くの刺し傷に耐え、呼吸をしているのか、医者にはほとんどわからない。Plumbumは、有機組織にヒステリックな状態を確立し、病気を装い、自分の病気を誇張する傾向があり、症状が一致している場合には、この悪の根源に迫ることができる。
変わりやすい;あるものから別のものへ、ある想像のグループから別のグループへ、ある感情のグループから別のグループへ、絶えず変化し続ける。このレメディーは、全体的に非常に感情的である。知性は鈍化しているが、症状のほとんどは感情的である。
Plumbumは、尿中のアルブミンと糖分を伴う腎臓疾患を治す。尿は暗色で、量が少なく、比重が大きい。膀胱が満杯であるという感覚の欠如による尿の滞留。
脳卒中。卒中血栓を常に取り囲む、大脳の鬱血を除去するのに、Opiumが、十分似ている場合の呆然とした状態には、Plumbumが後続することがある。PlumbumとPhosphorusとAluminaの3つは、いざと言う時の頼みの綱である。
最初の状態がOpiumのようなものであった場合、その症状に適合することがしばしばある。筋肉の麻痺、体の片側または体の一部分の麻痺性脱力は、このような場合との関係を示している。
上半身、頭脳、精神にはもう一つ特徴があり、これはテキストでは明らかにされていないが、注意を払うに値するものである。精神面の症状、感情面の症状、頭部の症状は、どんな労作ででも、特に野外での労作によって、大きく誇張される。
屋外を歩いていると、患者は頭が熱くなり、顔が青白くなり、四肢が冷たくなり、手足は氷のように冷たくなり、まるで死んだようになる。運動しても、四肢が冷たくて続けられない。
脳が過敏で、脳の基底部、首の後ろ、神経中枢に痛みがある。がんばると四肢が冷たくなる;しかし、かなりの頭脳作業をしても、冷たくならない。外気中を歩くような肉体的な運動によって起こる。夕方から夜にかけて、四肢に発作的な痛みが起こる;圧迫するとよくなり、動くと悪化する。雷に打たれたような痛み。四肢が全て痙攣したり震えたりする。
Plumbumの患者は寒がりで、やせ細り、暖かい天候でも多くの衣類を必要とし、頭には必要ないが、体を覆いたい。四肢は冷たく、青く、麻痺し、やせ細る。四肢に汗をかき、足には悪臭を放つ。足やつま先は、洗濯屋の手のようにカサカサしている。足の指は水ぶくれ、足の指の間に水ぶくれができ、痛む。潰瘍ができる。手指、足指の皮膚の分子死や、壊疽。足裏のタコ、角質、外反母趾。
頭部の慢性疾患では、背部および頸部の筋肉の収縮がある; 髄膜の問題を示す引っ張られるような痛みや単攣縮;痙攣し、グイッと引っ張られる。
「顎下腺と舌下腺の腫れ」
破傷風のような痙攣がしばしば起こり、初期破傷風を伴う。
「歯茎の縁に沿った明瞭な青い線」「歯茎は青白く腫れ上がり、鉛色の線が見える」「 青か紫か茶色で、硬い結節があり、痛みを伴う」「舌は乾燥し、茶色く、ひび割れている;黄色または緑色;慢性胃炎では乾燥し、赤く、艶がある」口臭、口内乾燥、潰瘍、アフタ。
「喉に栓があるような感覚;ヒステリー球」「喉の麻痺と呑み込めない”」食道の麻痺。
胃は食物を消化する力がない。同化作用も破壊される。腹部の痛み、引き裂かれるような痛み、疝痛のような痛み、患者は二つに折り曲がる。臍を糸で引っ張られるような感覚が常にあり、腹部が引き込まれるような感じである。時に腹部は凹み、腹部と背部が密着しすぎているようである。
便秘はよく知られた特徴がある。便秘、疝痛、腹部症状などがよく関連している。
「便秘の便は、羊の糞のように硬く塊状で、肛門の収縮や痙攣による催促やひどい痛みを伴い、玉状の結びついた便が出る」
どんなに力を入れても便を排出することができない。
「腸の収縮;へそと肛門が激しく引き込まれる」「腹部の過度の痛みから全身に放散する」「激しい疝痛;腹部の収縮;後方に曲がる、運動神経が最も影響する」
ゴロゴロとお腹が鳴り、鼓腸。便の停滞。痙攣を伴う膣炎。
「寝床で奇妙な姿勢や体勢をとる傾向がある」「貧血、萎黄病、衰弱、筋萎縮、動き回る痛み、水腫のような膨張、黄色い皮膚、黄疸」
燃えるような潰瘍は、どこにできても、レメディと一致する。