Lilium Tigrinum(リリアンティグ/オニユリ)

 今のところ証明されているLilium Tigrinumは、女性疾患に適合したものを示している。特に尿疾患や心臓疾患、さまざまな神経質な徴候で苦しむヒステリーな女性に合う;極端に苛つき、非現実的な観念、精神異常、宗教的な憂鬱、想像に溢れた、心臓疾患と脱出症を伴う女性に合う。これらの症状は、よく交互に現れる;精神面の症状が多く顕著である場合、身体面の症状は落ち着いている。脱出症と関連した「 引きずり落ちる」事は、胃の部分から引きずり落ちるようだ。喉からさえも引きずり落ちる事がある。あたかも内臓がすべて引きずり落ちているように起こる。極端に緩んだこの状態と共に、ひどい動揺と最も顕著な動悸がある。仰向けにだけ寝る事ができ、横向きで寝ると悪化する。あらゆる感情から心臓が速く鼓動し、不規則になり、興奮する。これらの精神面の症状と心臓の症状と尿の症状は、しばしば循環するか、或は交互に現われて主要な特徴を構成する。

 誰にもほとんどきちんとした一言を話せない。優しく話しかけられても口を閉じる。非常にイライラしているので、友人は患者をなだめられない。慰めは悪化さえさせる。話しかけられるとイライラする。夜に目が覚め、狂信的な宗教の考えや宗教的な憂鬱さで苦しみ、精神異常や宗教に関した考えや非理性的、非論理的、空想的な生活様式について思案する傾向に見える。すべてに関して間違った考えを持つ。間違った印象を受け、すべてが逆転している。患者を喜ばせるのは不可能。さてこの状態は、生殖器が刺激された状態と共存する色情狂;痙攣、動悸を伴った激しい性的興奮、発汗を伴う、疲労の時期を伴う。一人で 座り、想像上の問題をくよくよ考え込み、話しかけられると不機嫌になる。「考えが明白でない;患者が自分の意志を働かせたらもっと明白になる」、「書き間 違い、話し間違い、マインドを固定させて専念する事ができない;自分の救済について苦しむ」。

 まるで考えがばらまかれたようで、患者は頭に「狂った感じ」があると言って、表しきれない感情を表現しようとし、理性的に考えようとすればするほど、非理性的になる。何かについて考えようとすればするほど、思い出せない。何か他の事に心を奪われると、また戻って来る。興奮しきった神経質な女性における過 剰な性交や性的興奮から、動悸を伴ったマインドの混乱が引き起こされ、このレメディはあらゆる種類の症状を持つ。

 「気乗りしない、惰性的、だがじっと座りたくない」とテキストには書いてある。この患者はじっと座って、過ぎ去った事についてくよくよ考え込み、話しかけられたら飛び上がって、興奮して急いで駆けて行き、何の原因もないのにバタンとドアを鳴らす;家族や友人に優しく話しかけられても、患者は激怒するように見える。以前、このレメディで悪化していたの患者がこう言った;「今日、市電の中で話しかけられ、すごく腹が立ち、頭に何かを投げつけるところだった」と。自分の事で何かについて考えており、邪魔されたくなかった。癇癪の激しい状態、苛つきの激しい状態、バランスの喪失。「話しかけられたり、邪魔されたりした時、まるで飛上がるように思える」と患者は言う。友達と接触がある時、このような感情が起きる。接触は、倦怠や静寂状態から患者を目覚めさせるよ うだ。変わった事がこのレメディーには起きる。テキストに描かれた感覚は、非常にあいまいで多彩なので、プルーバーが感じた事を表現するため、彼らの側の努 力で見えてくる物がある。感覚は多くて表現できない。

 患者の血液は暖かい事が非常に共通している。Pulsatilla患者のようだ;暖かい血液、涼しい部屋にいたい、外気の中を歩くのが好き、ただ し脱出症が歩行によって悪化する場合は除く。頭は、外気中を動き回る事で一般的に改善される。> 外気中を歩く時。頭痛や多くの疾患は寒さや涼しい部屋で改善され、暖かい部屋で悪化する。 暖かい部屋で呼吸困難になる。Apis, Iodine, Kali i., Lyc. and Puls.のように、患者は混んだ部屋や劇場や教会で窒息する。

 後頭部から頭頂までおかしな感じが上がって来る。それを感じる人しかそれを表現できない。刺痛、または電気のような感覚と表現する事もある。後頭部にかす かに刺痛が起き、頭頂まで上がって行き、目眩と結びつく。その考えを厳密に調べると、精神には実際何ももたらしていない。臨床的にそのような事を何度 も調べ、考えを究めねばならない。額の痛みは非常に顕著で、ひどい視覚障害と関連し、部屋が暗く見える、視点が合わない。神経質な視覚障害、光恐怖症、目蓋の単攣縮、眼球の痙攣、まぶたや眼球など目の粘膜の炎症、結膜炎。頭の疾患、目が内側に入る、内斜視が非常に度々ある、または額の痛みを伴う卒倒に脅 かされる。これらすべてから、Lilium tig.の患者は過敏、 極端に神経質、ヒステリーな人に違いないとわかるだろう。これらは、極端に神経質で心臓の鼓動が不規則に速く、背骨を下降する痛みがあり、多かれ少なかれ 脱出症で、引きずり落ちるというひどい感覚を伴う患者と一般につながってている。ある状態が発生している時、他の状態は休んでいる;交互に起きるか、みんないっしょに存在するかもしれない。

 「 狂ってしまいそうに、 頭の中が狂乱した感じがし、右調骨部に痛みを伴う」。このプルーバーは「狂ってしまいそうなくらい、頭の中がおかしい感じがする」と表現したかったようだ。おかしな感じとは頭の混乱であり、まるで頭がそれ自身全く集中できないかのよう。これが、この患者が持つおかしな感じで理解される事であ る。まるで物が回っているか、自分の心を失うかのように、時々目眩のようなものがある。そして、ひどい裂けるように痛い頭痛が再び来、それは額の 狂った頭痛として表現されている。頭の混乱、または頭がおかしくなりそうな頭痛。

 下腹部や便、尿、生殖器は、この薬の使用範囲を提供してくれる。腹部臓器がすべて胃から引きずり落ちるよう。患者は腹を抱えたがる下垂腹。骨盤内臓器が はみ出るように思える。患者は横にならねばならず、丁字帯を身につけたがる。横から腹をしっかりと摑み、支えるために持ち上げたいのだ。まるで膣からすべてが生まれて来るかのように、骨盤内に衰弱または圧倒された感じがある。このレメディは非常に切迫した下痢があり、朝ベッドから飛び出させる;大変しっかり留めなければならない。これをSulphurと混乱するかもしれない。というのはLilium tig. は頭はひどく暑く、胃が空で、掌と足の裏が非常に焼けるようであるからだ。またこれには赤痢もあり、しぶりはらや粘液や出血で示され、Merc.cor.と ほとんど区別できないだろう。 便は血と混じった粘液がほとんどなく、しぶりはらは Merc. cor. に示されたように肛門が焼けるようにひどく痛い。先に描いたような神経質の患者に、特別な慢性の徴候として来る赤痢の発病に特に合う。さて、この患者は神経質だからとか、弱いからとか、小人だからとか、或はやせているからとか考えてはいけない;というのは、静脈が充満している人;特に合うのだから;明らかに多血症で血が充満した肉付きのいいまるまる太った大変神経質な女性で、特に人生の転換期に。骨盤と腹部の弛みに苦しみ、先に描いたような精神的な苛立ちが起き、動悸と心臓の不規則な鼓動があり、神経質な体質の人で、風邪をひくたびに周期的な赤痢にかかる。Merc. cor.にはこのような絵は見られない。ただ赤痢だけであったならば、どれなのか言う事はできないだろう。このような赤痢の表明は、「ガイディング・シン プトン」(訳者注;Guiding Symptoms/ヘリング著)から省かれているが、しかし、私はそれが立証されたのを何度も見た事がある。また、最も常習化した大変な便秘の症状も ある。

 膀胱や直腸のテネスムスもある。排尿に駆り立てられ、同様に便の衝動もある。たいへんな衝動を伴い長い間座り、長い間気張るが便が出ない。まるでボールが直腸にあるかのような感覚と共に、頻繁に駆り立てられる。子宮底が直腸に向かって回って戻った時、まるで直腸に便が充満しているような感覚が起きる;それは便の衝動をもた らし、患者は座って気張り、膀胱と直腸のテネスムスは我慢できないほど。便の衝動が続くが直腸の中に便はない。そのような症状を示すレメディが、短時間で患者の苦痛のすべてを楽にする事を知って驚く事だろう。しかし、このレメディは子宮をまた正しい位置に戻すのだろうか、と諸君は聞くだろう。そう、レメディの 投与後、患者は苦しみから楽になり、この不快な状態を感じる事はないだろう。腸は正常になり、排尿妨害は改善され、患者は徐々に健康を取り戻し、後に子宮 は(正常な)位置にある事がわかるだろう。

 「排便したいとほとんど続けて思い、直腸に圧迫感がある」。Lilium tigrinumは燃えるような痛みを伴う最も常習化した突き出た痔瘻を治した事がある。 「出産後の痔瘻、触ると痛い、まるで膣からすべてがはみ出そうな排便後の重圧」。出産後に来た痔に単に処方するべきという意味ではなく、このような体質の痔瘻を治したのである、また痔瘻だけでなく、緩んだ子宮と膣も治した。

 麻痺した弛緩は腹部の組織全体にある。他の部分とつなげて付随的に、子宮の症状を述べて来た。「生理が乏しい、動き回る時だけ流れる」。生理が非常に乏 しく、Puls.患者は同様の神経質な気質があるので、諸君はPuls.を考えるだろう。Puls.は生理が乏しく、外気で改善する。また、骨盤内で 非常に引きずり落ちる事があるが、この薬における慣例ほど極端ではない。この薬には Puls. と違う点が多くある。

 そして心臓の症状。「まるで心臓がぎゅっと握られたよう、または万力で強く搾られたよう、激しく握られたように思える」、「心臓に圧縮されたような痛み」、「外気で寒気がするが目眩で>」 。

 背中と背骨を下降する痛みがある;震えを伴う、被刺激性の敏感な背骨。 Platinaと非常に近く競い合う。

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